記憶術について
記憶術の歴史
記憶術の歴史をたどると、古代ギリシア時代までさかのぼります。古代ローマの元老院では、弁論する際にメモを使用することが禁止されていました。そのため人々は記憶力に頼るしかなく、それが記憶術の発展につながったといわれています。
権力を得るには教養が必要であった時代、記憶力は絶対的に必要なものだったようです。古代ギリシアの記憶術は、その後中世ヨーロッパに渡り、聖書やその他の書物を記憶することに用いられました。
当時紙はとても貴重なもので、簡単に手に入るものではなく、また印刷の技術もまだ存在していませんでした。当時の多くの教養人は卓越した記憶力を持っていたと考えられます。
記憶術の開祖といわれているのが、古代ギリシアの詩人シモニデスといわれています。シモニデスの高い記憶力が分かる逸話が残されています。ある宴会の最中、シモニデスがちょうど席をはずしている時に天井が落下する大惨事がありました。
多くの人が下敷きになり、その身元が分からなくなりました。しかしシモニデスは誰がどの席に座っていたかをすべて記憶していたことから、大勢の身元を特定することができたといわれています。
日本においても記憶術は独自の進化を遂げてきました。古事記編纂者の一人といわれる稗田阿礼(ひえだのあれ)は、一度目や耳にしたことは決して忘れなかったといわれています。天武天皇に仕えていた稗田阿礼は、その優れた記憶力を見込まれて『帝紀』『旧辞』などの誦習を命じられました。その後、日本では今日にわたるまでさまざまな種類の記憶術が開発されています。